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ネガワット取引について
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ネガワット取引の仕組みやメリットについて

2017年の春から、日本国内で「ネガワット取引」がスタートしました。
ここでは、このネガワット取引の仕組みやメリットについて解説します。

ネガワット取引の概要や目的

「『家庭や企業等が節電して発生させた余剰電力』を『新たに生み出した電力』とみなす」という発想のことをネガワットと言います。
そして、「節電に対して報酬が支払われる仕組み」のことをネガワット取引と呼んでいます。

さて、電力を安定して供給するためには、需要と供給が釣り合っていなければなりません。
「電力がほしい」という需要が大きくなりすぎれば、停電が発生します。
しかし、停電を防ぐためには設備投資を行わなければならないかもしれません。
となると、そのコストをカバーするために電気料金が上がる可能性があります。

ですが、ネガワット取引によって「ピークにおける電力需要を下げることで、バランスを保つ」ことができれば、設備投資・電気料金の値上げなどを避けることができます。
こういった考え方のことを「需要抑制」と言います。

ネガワット取引の仕組み

ネガワット取引においては仲介業者が活躍します。
電力会社は「需要抑制に関する情報」を受け取り、仲介業者は「このように節電してください」と家庭や企業に指示を出します。
指示を受けた家庭や企業は、指示通りに節電すれば報酬を受け取ることができます。
そして、仲介業者は「電力会社に節電量を売ること」によって利益を得ます。
そのため、この仲介ビジネスに注目している大手IT企業や電気事業者が少なくありません。

さて、近年では一般家庭でも、蓄電・発電ができるようになっています。
そして、そういった「規模の小さい各種発電・蓄電システム」をITテクノロジーによってまとめることで、「疑似的な単独の発電所」として機能させることができます。

これを「バーチャルパワープラント」と言い、電力の安定供給を維持するための施策として注目されています。
ネガワット取引の仲介業者は、このバーチャルパワープラントの調整役も担当しています。

言ってみれば、「ネガワット取引もバーチャルパワープラントの構成要素の一部」なのです。

ネガワット取引の主なメリット

すでに触れている部分もありますが、ネガワット取引のメリットを挙げていきます。

電力の安定供給に貢献できる

繰り返しになりますが、「電力の需要・供給のバランス」が保たれやすくなります。
一般家庭からすれば、「大規模な停電が発生しにくくなる」というのが、このことによる最大のメリットとなるでしょう。

電気料金が下がる可能性がある

電力の安定供給がしやすくなれば、「電力会社にかかってくる設備投資コスト」が下がります。すると余計なコストが消えるぶん、電気料金が下がる可能性があります。

こちらは「ネガワット取引に参加しなくても得られるメリット」です。

節約しつつお金を稼ぐことができる

ネガワット取引に参加していれば、「節電しつつ、お金を稼ぐことができる」ということになります。
お家に発電システムがあれば、さらに大きなメリットを得られる可能性が高いです。

ネガワット取引が抱える課題

続いてネガワット取引の主な課題を挙げていきます。
まだ始まったばかりの制度ですから、今後の改善・法整備に期待しましょう。

電気料金格差が発生するかもしれません

「発電システムをある家庭」と「ない家庭」との電気料金の差が大きくなっていく可能性があります。

ただ、発電システムの導入費用も基本的に無料ではありません。
したがって、「お金をかけて発電システムを取り入れたのだから、電気料金が下がるというメリットを得られるのは当然である(そうでなければ釣り合いが取れない)」という考え方もあります。

「電気料金の公平性をどのように保つか」も、ネガワット取引の課題の一つであると言えるでしょう。

指示通りに節電されない場合がある

仲介業者から「節電指示」を受けた個人・企業が、その通りに節電するとは限りません。
そういった個人・企業が増えると、電力の確保が難しくなり、電力の安定供給がされにくくなる恐れがあります。

そのような事態を防ぐためにも、「インバランス料金(指示通りの節電が行われなかったときに発生するペナルティ)」があります。

ですが、「きちんと節電させるためにもインバランス料金を上げる」という方針を採ると、ネガワット取引からの離脱者が増えたり、新規参入者が減ったりする恐れがあると言えるでしょう。

逆に「ネガワット取引の契約者を増やすためにインバランス料金を下げる」とした場合は、「ペナルティ料金が低いのだから、そこまで真剣に節電に取り組む必要がない」と考える契約者が増加してしまう可能性があります。

そのため、インバランス料金は慎重に設定しなければならないのです。
また、場合によってはインバランス料金に代わる、「節電を促進するための施策」が必要になるかもしれません。