電力コラムCOLUMN

温度差熱利用による発電の仕組みと特徴について
follow us in feedly ネオコーポレーション 電力コラムのRSSフィード

温度差熱利用発電の特徴と仕組み|メリット・デメリット

下水、海水、河川水、地下水などの水源を熱源とするエネルギーのことを「温度差エネルギー」と呼びます。

温度差エネルギーを使ったテクノロジーとして有名なのが「ヒートポンプ」です。
まずは、ヒートポンプの仕組みについて見ていきましょう。

ヒートポンプの仕組み|温度差熱利用

圧縮機によって「冷媒」に圧力を加えると「高温ガス」になります。
その高温ガスを「水」や「空気」と接触させると熱が発生します。
この熱を、給湯や暖房などに活用することができます。

近年、「エコキュート」がこの技術を活用したものとして普及してきています。
エコキュートは給湯器の一種であり、こちらも「空気中の熱」を利用して熱エネルギーを生み出してお湯を沸かすことができます。

エコキュートによって「給湯に関する電気消費量」を大幅に減らすことができ、「電気温水器」や「ガス給湯器」からエコキュートに切り替えることで、電気代を大幅に減らすことができます。
また、生み出す必要がある「電気」や、限りのある「ガス」ではなく、理論上ほぼノーコストでいくらでも発生する「空気中の熱」を使ってエネルギーを作りますから、地球環境にも優しいと言えます。

エコキュートが登場した当初は、「エコキュート自体の価格が高い」「水圧が弱くなりやすい」「小型のものがなく狭い場所には置きにくい」などのデメリットがあり、あまり普及しませんでした。
ですが、だんだんとそれらの欠点が払拭されていくにつれて、国内におけるエコキュートの普及率がアップしてきました(エコキュートの値段は当初の半分以下となっています)。

エコキュートは「温度差熱利用を活用した、家庭でできる省エネ」としては非常に効率のいいものであると言えるでしょう。

温度差熱利用のメリット

仕組み上、「燃料を燃焼させる」という過程がありません。
そのため、エコキュートのような小規模のものであっても、「海洋温度差発電」などの大規模なものであっても、自然環境に与える悪影響が少ないと言えます。

また、もともと自然界の存在する熱を使いますので、天候にほとんど左右されずに、安定してエネルギーを得ることが可能です。

温度差熱利用発電よりも有名な発電方式としては、「太陽光発電」や「風力発電」などがありますが、これらはいずれも天候の影響を受けやすい発電方法であると言えます。
もちろん、「だから太陽光発電や風力発電が役に立たない」というわけではありません。
太陽光発電や風力発電、そして温度差熱利用発電などをバランスよく活用して、安定して電気を生み出していくことが大事です。

そして、温度差熱利用発電により発生させたエネルギーは、寒冷地域で雪を溶かすために使ったり、温室栽培に利用したりすることもできます。
このように「活用の幅が広い」ということも、温度差熱利用発電のメリットであると言えます。

温度差熱利用発電のデメリット

エコキュートなどの小規模なものであれば、2010年代以降も普及率が上がってきています。
むしろ最近になって、さらに導入する家庭が増えてきていると言われています。

ですが、「発電所」と呼べるレベルの大規模なものについては、1990年代後半あたりから、あまり発展していないというのが現実です。

その理由として、まず「人が住んでいるところ(とその付近)には導入しにくい」ということがあります。
これは温度差熱利用発電だけが抱えている問題ではありません。誰しも「自然に優しい発電施設を増やすべき」「発電施設を増やして、国民全体が安定した電気を得られるようにすべき」とは考えているでしょう。
しかし、いざ自身の生活範囲内に大規模な発電所ができるとなると、景観の問題や騒音などが気になって受け入れがたいと感じる人が多いのです。

また、建設工事が大規模なものとなるため、かなりのコストがかかります。

温度差熱利用発電が抱える課題とすべきこと

現状では建設工事に大きな費用がかかる状態となっていますので、機器自体や施工のコストを下げるべく、研究・開発を進めていく必要があります。
また、施工や発電の効率を上げていくことも大事ですし、同じ設備を長期的に使えるように「高耐久化」を図ることも大事です。

そして「家庭」という単位で考えるのであれば、先ほど紹介したエコキュートを導入するのが良いでしょう。
「地球のため」「環境のため」という理由だけではなかなか導入・継続できないものですが、「光熱費の節約」という分かりやすいメリットがあるため、普及しているのでしょう。

ちなみに、ガス給湯器からエコキュートに切り替えることで、月々の光熱費を1万円近くカットできる家庭もあります。そうでなくても5000円程度であれば減少させることができる家庭が多いようです。
このように光熱費が下がることによって、更なる省エネ意識が生まれる人も少なくないようです。