電力コラムCOLUMN

波力発電の仕組みと特徴について
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波力発電とは、波の運動エネルギーを利用し電力を得る発電方法のことです。台風や津波など、波の持つエネルギーは大きく危険を伴いますが、一方でこの巨大な波エネルギーを活かした波力発電の研究が進められています。今回は波力発電の仕組みや特徴についてご紹介します。

<波力発電の仕組み>
波力発電は4通りの発電方法があります。

●波動水柱型
波のエネルギーを利用して空気を動かし、この空気でタービンを回して発電します。発電装置の中にある空気室とよばれる箇所に海水が流れこみます。水面の上下運動によって空気が押し出され、押し出された空気が風となり、タービンが回転し発電する仕組み。振動水柱型波力発電は、おもに航路用のブイなどの電源として利用されており、広く実用されています。

●可動物体型
タービンを用いずに、波エネルギーを振り子の運動エネルギーに変換して、油圧モーターを回転させて発電します。振り子式受圧板が海に触れており、この受圧板が波に揺られることによって振り子の運動エネルギーが発生。その運動エネルギーが油圧発生装置を動かすことにより、油圧モーターが回転し発電する仕組み。

●越波型
貯留池の水面と、海面の高低差を利用してタービンを回転させて発電します。貯留池を築いて防波堤により、海と貯留池を隔てます。そして防波堤を越えてきた波が貯留池に溜まって水面と貯留池の水面差が発生。その高低差をなくそうとする海水移動によってエネルギーが生まれ、そのエネルギーでタービンを回し発電する仕組み。

●ジャイロ式
ジャイロ効果を利用した新しい発電方式。(ジャイロ効果=回転する物体はその姿勢(回転軸)を一定に保とうとする性質のこと。)おもちゃのコマを例にすると、コマが勢いよく回転しているときにコマに触れると、一瞬コマは傾きますが、元に戻ろうとします。簡単にいうと、これがジャイロ効果です。この元に戻ろうとするエネルギーを利用し発電する仕組み。

<波力発電の特徴>
「振動水柱型」が広く実用されている波力発電技術ですが、「ジャイロ式」が世界的に見ても革新的なアイデアとして注目を集めています。注目を集めている理由のひとつに効率の高さがあります。波は行ったり来たりの運動ですが、発電機は回転により電気を作ります。他の波力発電方式では、空気や複雑な機構を使い、波の直線的な運動を発電機の回転へ変換させます。そのため施設が大きくなり、無駄が多くなります。一方ジャイロ式は、大きな浮きの上に高速回転させた円盤を置きます。すると波に揺られ傾きます。このときにジャイロ効果によって、円盤をまっすぐに保とうとする回転運動が生まれます。波で揺らすだけで発電機を回せるため、高い効果が実現できます。
波力発電のメリットひとつは、面積辺りの発電効率が他の自然エネルギーより優れています。風力発電の約5倍、太陽エネルギーの、なんと約20~30倍です。波エネルギーは、空気よりずっと重い水の運動エネルギーを利用するためです。発電効率が良いのは、上記のほかに発電の安定性も理由の1つとなっています。それでは、波力発電・風力発電・太陽光発電を比較してみます。

●風力発電
風が弱かったり、吹かなかったりすると発電できない。
風向きや設置場所の条件に左右されてしまう。

●太陽光発電
発電できる時間帯が限られてしまう。
天候の影響を大きく受ける。

●波力発電
日本は島国であるため、波を比較的得やすい。
波がまったくない状態が続くということが、ほとんどないため他の発電よりムラがない。

このように風力や太陽光発電に必要なエネルギーは、外部要因により発電量が大きく左右されるのに対し、波力は比較的安定した発電が見込めます。そして、島国の日本は、長い海岸線を活かし、広範囲で波エネルギーを活用できるのもポイントのひとつです。では何故、発電量や安全性に優れている波力発電が実用化されていないのでしょう。理由は大きく分けて3つのデメリットにありました。

●コスト
コストの中でも大きく分けて2つあります。「設置コスト」と「維持コスト」です。波力発電装置するのは海上のため、潜水作業が必要となり、陸上に設置する発電機よりも、時間や費用が多くかかる。そして大きな波の運動エネルギーを受けることや、海水による腐食、貝・フジツボなどの付着により、発電機の点検やメンテナンスの定期的な維持コストがかかります。

●安全性
波力発電所は防波堤や近海に設置される可能性が高いため、台風や津波などの災害に対して安全を確保できるのか懸念されています。波力発電装置は波を取り込む大きな構造を伴い、波の直撃を避けることができず、十分な強度が必要となります。

●漁業との兼ね合い
波力発電所の設置に良い場所は、海流の流れがある程度活発なところ。それは漁船が往来する漁場に設置するということになります。そのため、漁業関係者の理解と協力が必要になります。

1970年代のオイルショックから注目されるようになり、世界的に化石燃料への危機感が高まり、代替エネルギーの研究開発が進められるようになりました。このときに、太陽光発電、風力発電などと同様に波力発電も注目を集めたのです。そして日本は、世界で注目を集めるより前の1919年に波力発電に関する実験が行われ、1965年には海上保安庁により世界で初めて実用化された波力発電装置「益田式航路標識ブイ」が採用されました。現在でもこの装置は国内外で稼働しています。しかし、石油価格高騰の落ち着きや資金難により日本での研究は下火になりました。継続して研究を続けていた欧州、米国では一部実用化されているのに対し、日本は実用化に至っておりません。
しかし、ふたたび日本でも、実用化へ向けて実験や開発が行われるようになりました。 昨年2016年の8月、東日本大震災で被災した岩手県久慈市の漁港に、波力発電が設置されました。試験的な電力供給が始まり、国の許可が得られれば、地域へ送信する「国内初の波力発電」となります。そして世界初の技術で注目を浴びているジャイロ式波力発電に加え、三井造船や三菱重工が従来の波力発電装置を改良した新設置を開発しています。 日本に適した波力発電。今後の活躍にも期待しましょう。